ゴールデンウィークの10連休への対応を検討する際のポイント
2019.02.14
木戸部長:
こんにちは。そろそろ来年度の会社カレンダーを作成しようと思っています。今年のゴールデンウィークは天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位に伴う国の儀式があり、10連休になるという話が出ていますが、会社も必ず10連休にする必要があるのでしょうか?
社労士:
天皇の即位の日となる5月1日(水)が国民の祝日扱いとなることで、国民の祝日にはさまれることとなる4月30日(火)と5月2日(木)も休日となり、その結果、4月27日(土)から5月6日(月)まで10連休になるという話ですね。会社の休日は、就業規則で定める休日になりますので、必ずしも10連休とする必要はありません。御社では、たしか「会社カレンダーによる」と定めていますね
木戸部長:
はい、当社では毎週日曜日は休日としていますが、土曜日や国民の祝日は業務繁忙によって出勤するケースもあることから、年間休日日数を110日と設定し、会社カレンダーによるとしています。それでは、なぜ世間では10連休になるという話がでているのでしょうか?
社労士:
実は、行政機関は「行政機関の休日に関する法律」で休日が決まっており、「国民の祝日に関する法律に規定する休日」が休日の一つとなっています。今回、天皇の即位の日等を「国民の祝日に関する法律に規定する休日」とする法律が成立したことから、行政機関が10連休になります。また、公務員(特殊な勤務形態の人を除く)の休日についても、土曜日と日曜日の日のほか、「国民の祝日に関する法律に規定する休日」が休日の一つとなっています。
坂本社長:
なるほど。だから法律が成立すると、当然10連休という話になっていたのですね。
社労士:
はい。また、一般企業においても、就業規則で定める休日に、「国民の祝日」を含めているケースがあります。そうなると、4月30日から5月2日までが自動的に会社の休日になります。今回のケースですと、少なくともこの3日間は休日が増えるということになります。
坂本社長:
そうか、就業規則で自動的に休日扱いになるということですか。確かに、以前は行政機関にあわせて休日を設定する会社も多くあったように思います。それでは、就業規則の休日に国民の祝日と定めている会社は、休日にしなければならないという話でしょうか?
社労士:
はい、基本的にはそうなります。これまでは国民の祝日が増えることにより、このような10連休が発生するようなことはなかったかと思います。ただ一方で、年間の休日日数は、国民の祝日が土曜日と重なることなどにより、変動することがあるため、年間休日日数を決めて、会社の休日を決めることも多くあります。もちろん、自社の繁閑や一定の労働時間を確実に確保したいという目的や、そもそもサービス業で行政機関の休みにはあわせないという会社もありますからね。
木戸部長:
当社もそのような会社ということですね。
社労士:
そうですね。御社では就業規則で年間休日日数を110日と決めているため、この日数を元にカレンダーを作成することで問題ありません。例年通り、日曜日を休日とし、その他は業務の繁忙や国民の祝日、長期連休を設定するかということにより、休日を決めていけばよいかと思います。もちろん、労働時間の原則は1週40時間、1日8時間ですので、変形労働時間制の利用も含め、法定を超えるような労働時間・労働日は決められないことにご注意ください。
坂本社長:
そうなると、就業規則で定める休日に、「毎週土曜日および日曜日」、「国民の祝日」と記載していて、当社のように定めのない会社では10連休になってしまうのか。
社労士:
はい。そうなります。そのような会社で、年間休日日数を定めているのであれば、増加する国民の祝日を含め5月は10連休とし、例年、会社カレンダーで指定していた8月の休日(夏季休暇)をなくすような対応も考えられます。
坂本社長:
なるほど。どこかにしわ寄せがいく結果になりそうですね。
社労士:
確かに単純に、「国民の祝日が増えた」と喜べる人ばかりではないように感じています。ちなみに、この機会に就業規則を見直し、国民の祝日を会社の祝日から除くという対応を行うことは就業規則の不利益変更に該当するため、慎重に進める必要があります。また、定めのなかった年間休日日数について新たに定めを入れるときにも、これまでより休日日数が少なくなることも考えられます。そのようなときにはやはり不利益変更に該当します。
木戸部長:
確かに慎重に検討が必要になりますね。
社労士:
今回は、天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位に伴う国の儀式があり、就業規則を整備したときの想定を超えている状況にあるかと思います。そのため、どのように対応していくのか早めに検討し、就業規則を見直すのであれば社員のみなさんの同意を得て進めるようにした方がよいですね。また、年間休日の日数が関係してくる事項として、休日の日数が変動すると、途中入社や退社などの際に行う日割計算の基礎となる日数や残業をはじめとした割増単価を算出するときに用いる1ヶ月の平均所定労働時間数に影響してきます。そのため、実態に合わせて給与計算ソフトの設定を変更する必要があります。
木戸部長:
毎年、同じ値を使っていると、計算が間違っている可能性があるということですね。
社労士:
そのとおりです。値が正しいものになっているか確認が必要です。
木戸部長:
年間休日の日数は様々なところに関係してくるのですね。
社労士:
所定休日日数を決めていたり、その目安を決めて運用していたりすることも見られますが、就業規則の休日として明記していないことも見受けられます。それが直ちに問題になるわけではありませんが、今回のような国民の祝日の増加を考えると、年間休日を定めた方が分かりやすいのではないかと考えています。
木戸部長:
ありがとうございました。
ワンポイントアドバイス
今年は、天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位に伴う国の儀式があることから、10連休の対応についてとり上げてみました。この年間休日の日数は、求職者が応募する際の条件のひとつとしていることがあり、求人募集を行う際にも注意しておきたいものになります。 年間休日の日数が分かるデータとしては、厚生労働省から「平成30年就労条件総合調査結果の概況」が公表されています。これを企業規模別に見ると、30人から99人が106.4日、100人から299人が110.3日、300人から999人が112.5日、1,000人以上が114.9日となっています。求人募集の面からも、この年間休日の日数について検討してみるとよいでしょう。
参考リンク
内閣府「国民の祝日について」厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。