年次有給休暇に関してよくある質問(休業/休職、計画的付与)
2019.10.10
木戸部長:
こんにちは。今日は、年休の取扱いについて教えてください。妊娠している従業員から産前休業の期間に、年休を取得したいという申し出がありました。このような申し出は初めてなのですが、年休が取得できるのでしょうか?
社労士:
この場合、年休を取得することは可能です。産前休業については、従業員から請求があれば取得することになっているので、産前休業の請求はなく、年休が請求されたと判断することになります。
木戸部長:
なるほど。そもそも産前休業は、請求があれば取得させるものだったのですね。では、産後休業や育児休業と、年休の兼ね合いはどのようになるのでしょうか?
社労士:
まず産後休業の期間は、産前休業と異なり、原則として就業させることが禁止となっています。そもそも働くことが認められていない(労働義務が免除されている)日となるため、年休を取得することはできません。次に、育児休業は、先に育児休業を取得することが決まっている場合、産後休業と同様に、労働義務が免除されている日になるので、年休を取得することはできません。
木戸部長:
ということは育児休業より先に、年休を取得することが決まっていればそちらが優先されるということですね
社労士:
実務上、そのような取得はほぼ見られませんが、考え方としてはそのとおりです。また、育児休業だけでなく、私傷病により休職する場合も同様の考え方ができます。
木戸部長:
休職が命じられた期間は労働義務の免除がされるから、その期間に年休を取得することはできないということですね。
社労士:
その通りです。
坂本社長:
ところで、年休に関連して今年4月より、1年に5日の取得が義務化されたことから、年末年始の休暇に年休を2日加えて、長期休暇にすることを検討しています。
社労士:
あらかじめ日にちを決めて、従業員に一斉に年休を取得させるという、いわゆる「計画的付与」を行うということですね
木戸部長
はい。9月末に年休の取得状況を確認したところ、取得日数がゼロの人も複数いたことから、2日間だけですが取得する日を指定しようと思っています。
社労士:
なるほど。取得状況の途中経過を確認されたのですね。素晴らしいです。
木戸部長:
この計画的付与を行う際には、どのような点に注意が必要でしょうか?
社労士:
まず就業規則に計画的付与を行う旨の根拠条文が必要です。その上で、具体的な取扱いを労使協定で定めます。労使協定で定めることが必要な項目は、以下の1.~5.です。
- 計画的付与の対象者(あるいは対象から除く者)
- 対象となる年休の日数
- 計画的付与の具体的方法
- 対象となる年休を持たない人の取扱い
- 計画的付与日の変更
木戸部長:
4.の「対象となる年休を持たない人の取扱い」について、年末年始に2日の年休を予定していますので、このときに年休が付与されていない人に何らかの対応が必要になるということですか。
社労士:
そうですね。一斉に取得する休暇ですので、そのような人には特別有給休暇を付与したり、会社を休ませることになるため最低でも休業手当の支払いが必要になったりします。
木戸部長:
わかりました。おそらく年休が付与されていない従業員もいるので、実際に一斉に休暇とするときには取扱いをどのようにするか決めておきます。
社労士:
よろしくお願いします。
木戸部長:
実際、計画的付与を行うか否か社内で検討し、追加の質問等が出てきたらご連絡します。
ワンポイントアドバイス
今回は、年休にまつわる質問を解説しましたが、ここで年休が取得できる日について補足しましょう。
この年休が取得できる日とは、上記でとり上げた通り、労働義務のある日になります。会社の休日は、労働契約上、もともと労働義務がない日であるため、この日に取得することはできず、この休日に、休日労働が命じられたとしても、この日が会社の休日であることに変わりはないため、年休を取得することはできません。
参考リンク
厚生労働省「2019年4月から、全ての使用者に対して「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられます。」※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。