発行が早くなる協会けんぽの任意継続における健康保険証
2019.12.12
木戸部長:
こんにちは。今日は12月に退職する従業員の健康保険の取り扱いについて、相談に乗ってください。
社労士:
承知しました。どのようなことでしょうか。
木戸部長:
12月末に退職する従業員が、退職後の健康保険として任意継続を希望しています。任意継続の制度自体は理解しているのですが、その中で健康保険証の発行までに時間がかかるというのを気にしており、なるべく早く受け取ることができないかと言っています。
社労士:
なるほど。今年のうちは今の健康保険証が利用できますが、来年以降は使えませんからね。
坂本社長:
彼には小さい子どもが3人いて、結構、病院にかかることが多いようだね。
木戸部長:
そうですね。年始早々、体調を崩して、病院にかかることもあるかも知れないからと話していました。もちろん、1月にならないと手続きができないことはわかっているのですが、年末までに資格喪失の手続きの準備をしても、年始になって健康保険証を回収して届け出ると、1週間程度はすぐに経ってしまいますよね。
社労士:
そうですね。確かに資格喪失の手続きを待ってから手続きをすると、新しい健康保険証は1月中旬でも届かないということになるでしょう。ただし、今年10月から協会けんぽでは任意継続における健康保険証発行の取扱いを変更しており、会社からの資格喪失の手続きを待たずに、任意継続の健康保険証の作成ができるようになりました。
木戸部長:
そうでしたか。退職する従業員にとっては朗報ですね。
社労士:
そうですね。これまでの手続きでは、退職後に会社が資格喪失の手続きを行い、日本年金機構の資格喪失記録の提供を受けてから、協会けんぽがその記録の確認を行い、任意継続の健康保険証を作成するという流れでした。
木戸部長:
確かに以前、「会社が資格喪失の手続きを行っていないから、任意継続の健康保険証ができない。早くして欲しい」と、退職した従業員から連絡が入ったことがあります
社労士:
この手続きの流れが見直され、現在では任意継続の資格取得の手続きをするときに、退職日の確認ができる書類を添付することで、会社の資格喪失の手続きを待たずに、任意継続の健康保険証を作成してもらえることになりました。
坂本社長:
なるほど、任意継続の資格取得の手続きを先行して行ってくれるということですね。
木戸部長:
会社としては、落ち着いて事務処理ができるのでありがたいです。そこで、退職日の確認ができる書類というのは、例えば退職証明書等でしょうか。
社労士:
はい。協会けんぽが想定しているものは、退職証明書の写し、雇用保険被保険者離職票の写し、健康保険被保険者資格喪失届の写し等です。資格喪失の事実が確認できる会社または公的機関の証明印が押された書類が必要になります。
木戸部長:
それらのものであれば、比較的簡単に用意できそうですね。
社労士:
そうですね。ちなみに、退職日の確認ができる書類の添付がなくても、任意継続の資格取得の手続きができるようですが、この場合はやはり、日本年金機構から資格喪失記録の提供を受けてから健康保険証が作成されます。やはり、健康保険証が手元に届くまでは時間がかかることになりそうですね。
木戸部長:
今回の場合は、退職証明書の写しを年始なるべく早く郵送することで対応できそうですね。
社労士:
そうですね。ちなみに、退職証明書等に記載された退職日と、後日、日本年金機構から提供される資格喪失の記録とに相違がある場合には、任意継続の資格取得日等が変更となるため、健康保険証の差替えが必要となります。また、任意継続の資格取得年月日が月をまたいで変更となる場合、任意継続の健康保険料を追加で支払ったり、還付の手続きを行ったりする必要が出てきます。
木戸部長:
会社としても手続きを慎重に行う必要があるということですね。
社労士:
そうですね。
木戸部長:
今回の場合は、退職証明書の写しを年始なるべく早く郵送することで対応できそうですね。
坂本社長:
退職者に案内することで、少しは安心すると思うので、早速伝えてあげてくださいね。
木戸部長:
承知しました。伝えることにいたします。
ワンポイントアドバイス
任意継続の資格取得の手続きは、退職後20日以内に行う必要があり、日本年金機構から提供される資格喪失の記録を協会けんぽが確認した後に任意継続の健康保険証を作成する流れでは、健康保険証の郵送まで申出後2~3週間程度の時間を要することになっています。
これが退職日の確認ができる書類を提出したときには、健康保険証の郵送まで申出後1週間程度の時間となります。退職後の健康保険の切り替えがスムースに進められるように、任意継続を希望する従業員には退職時に説明するとよいでしょう。
参考リンク
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。