健康保険から支給される傷病手当金の概要
2019.10.01
従業員が私傷病により会社を休むこととなり、その間、給与が支給されないときは、従業員にとってはその収入が途絶えるという問題が生じます。そのため、健康保険では働くことができない日に対する所得の補填として傷病手当金という制度が設けられています。そこで、今回はこの制度の概要をとり上げましょう。
[1]傷病手当金とは
健康保険は、被保険者および被扶養者の私傷病による疾病、負傷、死亡または出産に対して給付を行うことを目的としています。このうち傷病手当金は私傷病で療養し、以下の4つの要件をすべて満たしたときに支給されるものです。
- 私傷病による病気やけがのため療養中であること
- 医師が労務不能であると認めていること
- 労務不能の日が継続して3日間あること(待期期間)
- 給与の支払いがないこと
3.については療養のために仕事を休み始めた日から連続した3日間を除いて、4日目から支給対象になるという意味です。この3日間は年次有給休暇を取得することなどで給与が支給されていたとしても2.の要件を満たせば含めることができます。ただし、労務を提供していない期間が連続して3日間必要であるため、欠勤と出勤を1日ずつ交互に行うような場合には、要件を満たしません。
[2]傷病手当金の支給額と支給期間
傷病手当金の1日当たりの金額は、原則として「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額」を平均した額を30日で除した額(10円未満四捨五入)の3分の2の額(1円未満四捨五入)です。この額に支給対象となる日数を掛けた金額が支給されます。
なお、休んだ日について給与が支払われた場合、その額が傷病手当金の額より多い場合には傷病手当金は支給されず、逆にその額が傷病手当金の額より少ない場合は傷病手当金と給与の差額が支給されます。
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から最長1年6ヶ月です。これは暦で数えることになっており、実際に支給された期間ではありません。例えば、休職している従業員が支給開始日から1年6ヶ月の間に一旦復職し、その後、再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復職期間も含めて1年6ヶ月となります。
この他、私傷病により従業員が退職したときには、退職後も傷病手当金が支給される継続給付の制度があります。退職後も働くことができないときには、雇用保険の基本手当も受給できないため、傷病手当金が貴重な収入となります。会社は要件を確認のうえ、通常の退職手続きに加えて従業員にその内容を説明することが求められます。
参考リンク
協会けんぽ「傷病手当金」※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。