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働き方改革を進める際に活用できる助成金

2019.05.23

 

助成金制度は年度単位で予算が立てられているものが多く、年度初めに助成金の創設・改廃が行われるものが多くあります。今回の特集では、働き方改革が求められている中で、2019年度に中小企業が比較的活用しやすい助成金をいくつかご紹介します。

時間外労働の上限規制

今回、時間外労働の上限となる時間数が罰則付きで労働基準法に規定されました。その時間数は原則として月45時間、年360時間であり、臨時的な特別な事情がなければこれを超えて従業員を働かせることはできません。臨時的な特別な事情があるときには、労使の合意を持って特別条項を締結することで、この月45時間、年360時間を超えて従業員を働かせることができますが、そのときでも上回ることのできない労働時間の上限が設けられました。その具体的な内容は以下のとおりであり、1~4のすべてを守る必要があります。

1.時間外労働上限設定コース

2019年4月より、大企業が先行して労働基準法の時間外労働の上限規制が適用されましたが、中小企業については2020年4月より適用されます。そのため、中小企業でも生産性向上を通じた時間外労働の削減に向けた取組みが求められています。このコースは月45時間を超えるなどの特別条項付き36協定を締結し、当該時間を超える時間外労働等を複数月行った労働者がいる事業主(単月に複数名が行った場合を含む)が、長時間労働の見直しを図り、働く時間の縮減への取組みを支援するものになります。

[成果目標]

事業主が事業実施計画において指定したすべての事業場において、2019年度または2020年度に有効な36協定の延長する労働時間数を短縮して、以下のいずれかの上限設定を行い、労働基準監督署へ届出を行うという成果目標の達成を目指して実施します。

  • 時間外労働時間数で月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定
  • 時間外労働時間数で月45時間を超え月60時間以下かつ、年間720時間以下に設定
  • 時間外労働時間数で月60時間を超え、時間外労働時間数および法定休日における労働時間数の合計で月80時間以下かつ、時間外労働時間数で年間720時間以下に設定

この成果目標に加えて、週休2日制の導入に向けて、4週当たり5日から8日以上の範囲内で休日を増加させることを成果目標に加えることができます。

[支給対象となる取組み]

取組みとしては、以下のいずれか1つ以上を実施する必要があります。

  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更(時間外・休日労働に関する規定の整備など)
  • 人材確保に向けた取組み
  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  • 労務管理用機器の導入・更新
  • デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  • テレワーク用通信機器の導入・更新
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

[支給額]

成果目標の達成状況に応じて、支給対象となる取組みの実施に要した経費の一部が支給されます。具体的には、以下のいずれか低い方の額となります。

  • 1企業当たりの上限200万円
  • 上限設定の上限額および休日加算額の合計額
  • 対象経費の合計額に補助率3/4を乗じたもの(※)
    ※常時使用する労働者数が30名以下かつ、上記の支給対象となる取組みで(6)から(10)を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5
  • 事業実施期間中(交付決定の日から2020年2月22日(土)まで)に取組みを実施する必要があり、また申請の受付は2019年11月29日(金)まで(必着)です。

2.勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバルとは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く人の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図ることを目的としたものです。2019年4月より、制度の導入が努力義務となりましたが、このコースはその導入に取り組む中小企業を支援するものです。

[成果目標]

事業主が事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入するという成果目標の達成を目指して実施します。

[支給対象となる取組み]

時間外労働上限設定コースの1.と同様の取組みが求められます。

[支給額]

取組みの実施に要した経費の一部が、成果目標の達成状況に応じて支給されます。その額は対象経費の合計額に補助率3/4(※)を乗じた額となりますが、休息時間数等により定められた各々の上限額を超える場合は、上限額となります。
※常時使用する労働者数が30名以下かつ、上記1.の支給対象となる取組みで(6)から(10)を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5

事業実施期間中(交付決定の日から2020年1月15日(水)まで)に取組みを実施する必要があり、申請の受付は2019年11月15日(金)まで(必着)となっています。

3.職場意識改善コース

ワーク・ライフ・バランス実現のため、国は2020年に1週間の労働時間が60時間以上の雇用者の割合を5割減らし、年次有給休暇取得率を70%とする目標を掲げています。このコースは、生産性の向上等を図ることにより、所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業を支援するものです。

[成果目標]

以下の成果目標の達成を目指して実施します。

  • 1企業当たりの上限200万円
  • 上限設定の上限額および休日加算額の合計額

[支給対象となる取組み]

時間外労働上限設定コースの1.と同様の取組みが求められます。

[支給額]

取組みの実施に要した経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給されます。支給額は以下のどちらか低い額となります。

  • 対象経費の合計額に補助率を乗じたもの(3/4または1/2)(※)
  • 1企業当たりの上限額
    ※常時使用する労働者数が30名以下かつ、上記1.の支給対象となる取組みで(6)~(10)を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5

事業実施期間中(交付決定の日から2020年2月3日(月)まで)に取組みを実施する必要があり、申請の受付は2019年9月30日(月)まで(必着)です。

人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)

人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)は、今年度創設された助成金であり、働き方改革に取り組む上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を図る場合に助成金が支給されます。

助成金の対象となる事業主は時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業です。具体的には、2017年度であれば旧職場意識改善助成金、2018年度以降であれば時間外労働等改善助成金の指定されたコースの支給を受けていることが必要です。なお、2019年度以降に指定されたコース支給を受けた事業主も対象になり、この指定されたコースとは上記[1]1.~3.のコースが該当します。

[計画達成助成]

新たに雇い入れた労働者1人あたり 60万円(短時間労働者(※)1人あたり 40万円)
支給対象となる労働者は10人を上限とし、雇用管理改善計画認定通知書に記載された認定金額を上限に支給されます。

[目標達成助成]

労働者1人あたり 15万円(短時間労働者(※)1人あたり 10万円)
支給の算定人数の上限があります。
※週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者

新たに労働者を雇い入れても、雇用管理改善計画開始前後の労働者数を比較し、人員増とならない場合は助成金が支給されないなど、細かな要件が設けられています。そのため、活用を検討している場合は、事前に要件を確認しておきましょう。

4月より不正受給対策の強化が行われたことで不支給期間が延長され、過去3年以内から過去5年以内となりました。また、偽りその他不正の行為により雇用調整助成金等の支給を受けた事業主に、不正受給した助成額だけでなく、2割に相当する額の納付金、延滞金が課される場合があることとなりました。さらには、企業名等の公表も行われることになっています。
これらの内容は支給要件確認申立書に反映されており、支給申請にあたっては必ず提出する必要があります。助成金の詳細な要件と併せて、この支給要件確認申立書の内容も確認しておきましょう。

参考リンク

厚生労働省「労働時間等の設定の改善」
厚生労働省「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」
厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。