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医師の面接指導の対象者拡大と求められる労働時間の状況の適正な把握

2019.03.05

働き方改革関連法の施行に伴い、改正労働安全衛生法が4月より施行されます。今回の改正では長時間労働者への医師の面接指導の対象となる労働者の範囲が拡大されました。また、面接指導を適正に実施するために、労働時間の状況の把握を客観的な方法等で行うことが法令で義務化されました。

1.長時間労働者への医師の面接指導と対象者の拡大

脳・心臓疾患の発症を予防するため、企業には長時間にわたる労働により疲労が蓄積した労働者に対し、医師による面接指導を実施することが義務付けられています。これまで対象となる労働者は時間外・休日労働が1ヶ月100時間を超え、自ら申し出をした労働者※とされており、労働者から面接指導を申し出ることにより、疲労が蓄積しているかの判断が行われます。
 今回の改正により、過重労働により脳・心臓疾患の発症リスクが高い状況にある労働者を見逃さず、また労働者の健康管理等を強化する観点から、対象となる労働者の範囲が時間外・休日労働が1ヶ月80時間を超える労働者※に拡大されました。
※期日前1ヶ月以内に面接指導を受けた労働者等、面接指導を受ける必要がないと医師が認めた労働者を除く。

2.労働時間の状況の適正把握と面接指導の運用

これまでも過重な長時間労働や割増賃金の未払いをなくす観点から、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」という)が策定され、労働時間を適正に把握することが企業には求められてきました。今回、長時間労働者への医師の面接指導を適正に実施するためにも、客観的な方法その他の適切な方法により労働時間の状況を把握することが労働安全衛生規則により企業に義務付けられました。具体的な把握方法としては、ガイドラインを参考に、タイムカードやICカード、パソコン等の使用記録等を使用してすることが原則とされています。
 さらに、面接指導の対象となる1ヶ月当たりの時間外・休日労働が80時間を超える労働者についてはその労働時間に関する情報をメールや書類等で労働者に通知することも義務付けられています。面接指導の実効性を高めるためには、労働時間に関する情報とともに、面接指導の案内等を併せて行うと良いでしょう。
 また、面接指導を行った後は、企業は労働者の健康を保持するため、面接指導を行った医師に意見聴取を行い、必要に応じて就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません。

面接指導を適正に実施し、運用していくためには、社内体制の整備や医師との連携が重要になります。今回の法改正対応についても早めに準備を進めましょう。

参考リンク

厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。