年次有給休暇の取得状況を確認する際の注意点
2019.12.24
2019年4月より年10日以上の年次有給休暇(以下、「年休」という)が付与される従業員について、付与された年休の日数のうち5日については会社が時季を指定して取得させることが義務となりました。そのため、付与から四半期や半期を経過したタイミングで、取得状況の確認をしている企業も多いかと思われます。そこで今回は、この年休の取得義務化に関してみられる誤解の中から、取得状況を確認する際の注意点をとり上げます。
[1]対象企業
年休の取得義務化の対象となる企業は、すべての企業であり、中小企業も含まれます。時間外労働の上限規制については、大企業が2019年4月から先行して適用され、中小企業は2020年4月となっていることから、年休の取得義務化に関しても同様という誤解もみられるようですが、企業規模に関わらず、2019年4月より適用されています。
[2]パートなど所定労働時間・所定労働日数が短い者の考え方
年休の取得義務化は、年10日以上の年休が付与される従業員が対象となります。パートタイマーやアルバイトなど(以下、「パート」という)で、週所定労働時間が30時間未満・週所定労働日数が4日以下の場合の付与日数をみてみると、週の所定労働日数が3日(または1年間の所定労働日数が121日から168日)で勤続年数が5年6ヶ月以上の場合、週の所定労働日数が4日(または1年間の所定労働日数が169日から216日)で勤続年数が3年6ヶ月以上の場合、年10日以上の年休が付与されます。そのため、パートについても、年休の取得義務化の対象となる人がいます。なお、週所定労働時間が30時間以上の従業員については、フルタイムと同じ年休が付与されますので、当然に義務化の対象となります。
[3]休職等をしている場合の考え方
私傷病により休職している従業員や育児休業中の従業員といった、長期にわたり出勤しない従業員の考え方は以下のとおりです。
- 私傷病により休職している従業員
年休は労働日に取得ができ、また、取得させるものであるため、付与した日以前から休職をしていて、付与した日から1年間、休職となっていた(1年間の途中一度も復帰しなかった)場合など、そもそも労働日がなく、会社にとって義務の履行が不可能な場合には、法違反に問われるものではないとされています。
- 時間外労働と法定休日労働の合計が月100時間未満
付与した日から1年間、育児休業を取得しているようなときは、1.と同様の考え方になりますが、付与した日から1年間の途中に育児休業から復帰した従業員は年休の取得義務化の対象になります。ただし、復帰後の期間の労働日が、時季指定すべき年休の残日数より少なく、5日の年休を取得させることが不可能な場合はこの限りではないとされています。これは、付与した日から1年間の途中に復帰したものの、次に年休が付与される日までの残りの期間の労働日数が3日しかないような場合が該当します。
[4]取得すべき期間
年休の取得義務化は2019年4月よりスタートしましたが、必ずしも2019年4月1日から2020年3月31日までの1年間に取得させなければならないという訳ではありません。実際は、2019年4月1日以降に付与された日から1年間が年休の取得義務化の期間となっているため、例えば2020年1月に年休が付与される場合は、2020年1月1日から2020年12月31日までの1年間に年5日の年休を取得させる必要があります。
[5]年休の単位
年休は1日単位で取得することが原則ですが、例外として半日単位での取得も認められており、また労使協定を締結するなどの対応をしたときは、時間単位での取得も認められています。年休の取得義務化となる年休は1日単位と半日単位で取得したものが含まれ、時間単位で取得したものは含まれません。
これらの注意点を踏まえ、誤解していたものがあれば、再度、取得状況を確認しましょう。そして、年休の取得義務化の対象者で取得日数の不足がある従業員がいたときには、今後に向けて取得を促したり、取得時季を指定することで、確実に取得させるようにしましょう。
参考リンク
厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。